欧州の暗号資産規制「MiCA(ミカ)」が7月1日に全面施行される。域内でライセンスを持つ事業者は60社未満にとどまり、多くの申請が滞留し認可待ちの「宙吊り」状態が続く。
ドイツが突出した動きを示している。金融規制当局BaFinは約18社の暗号資産サービスプロバイダー(CASP)を認可済みで、全体の約36%を占める。他国の規制当局はこのペースに及ばない。
業界アドバイザーは、MiCA認可までの現実的な期間は申請から8〜12か月と指摘する。フランス、アイルランド、マルタ各国の規制当局は積み上がる申請処理に苦戦。申請待ちは、2024年12月30日の制度発効以降増加し続けている。
フランスの金融市場庁(AMF)は、未登録企業に最終警告を発出した。同庁は多くの申請が大幅な修正を要し、文書の品質低下が審査の遅れを招いていると指摘した。
2025年末時点で、フランスの暗号資産企業のおよそ3割が申請未提出だった。
リトアニアも同様の状況だ。登録済み企業のうちリトアニア銀行(Lietuvos Bankas)へ申請したのは1割未満で、全体で約30社にとどまる。中央銀行は遅れた企業に対し、罰金やウェブサイトの遮断、刑事告発も示唆している。
欧州証券市場監督局(ESMA)も昨夏から圧力を強めている。2025年7月に実施したマルタ金融サービス庁(MFSA)のピアレビューで、CASP認可に不備があると指摘。勧告内容は欧州経済領域(EEA)すべての当局に適用される。
ESMAの調査結果は、事業モデル評価・利益相反・ICT(情報通信技術)体制も弱点として警告。承認時にはデジタル運用耐性法(DORA)に準拠しているか各国当局が審査するよう促している。
ドイツは経過措置期間を12か月に短縮し、2025年12月31日で終了する。期間短縮で事業者の早期申請が進んだ。BaFinは直近四半期だけで新たに16機関へMiCA認可を付与した。
1月にはDZ銀行がMiCAライセンスを取得。同行は小売向け取引プラットフォーム「meinKrypto」を開始する。今回の承認は、BaFinが既存銀行からの申請を積極的に処理していることを示す。なおBaFinは昨年、EthenaのUSDeステーブルコイン申請も却下した。
一方で、ドイツ当局はMiCAを法令以上に厳格運用しているとの批判もある。この方針により、BybitやKuCoin、AMINAなどはオーストリアへ拠点移転。コンプライアンス費用は25万〜50万ユーロに達し、中小企業には重荷となる。
批判はあるものの、BaFinの迅速な処理でドイツはパスポート制度で優位に立つ。認可企業は27加盟国全域でサービス提供が可能となる。
各国規制当局の遅れは、実質的に越境ビジネスをドイツ監督下の競合に譲る形だ。ドイツのシェア36%は、オランダやマルタの発行数を大きく上回る。
7月1日の移行期限まで残り約2週間。ドイツと遅れた各国当局の差が、どのCASPがEU全域でサービス展開できるかを左右する。
今後数週間で、遅れた当局がどれだけ申請処理を進めるかが明らかになる。


