Web3ベンチャーキャピタルIOSGベンチャーズの創設パートナーであるJocy氏は21日、2025年の暗号資産(仮想通貨)市場を総括し、「最も暗い1年であると同時に、機関投資家時代の夜明けである」とする分析を公開した。
Jocy氏はまず、2025年の主要資産の騰落率を比較し、暗号資産が伝統的資産に対して著しくパフォーマンスが低かった点に触れた。銀が130%増、金が66%増、ナスダックが20.7%増を記録した一方で、ビットコイン
BTCは年次で5.4%減、主要アルトコインは35%から60%の下落となった。
しかし、同氏は「価格だけを見ていては、最も重要なシグナルを見落とす」と警鐘を鳴らす。
ビットコインは年次でマイナス成長ながらも、期間中には史上最高値を更新。その裏では、ビットコイン現物ETF承認を「分水嶺」として、市場の主導権が個人投資家からマクロ投資家、企業財務、主権系ファンド(ソブリン・ウェルス・ファンド)といった機関投資家へと移り変わるパラダイムシフトが起きていたことを、Jocy氏は指摘する。
具体的には、ブラックロックの「iShares Bitcoin Trust ETF(IBIT)」はわずか228日間で運用資産残高(AUM)500億ドルに到達し、現在、約80万BTCを保有してストラテジーを上回る規模となっている。また、運用資産が1億ドルを超えるプロの投資家による保有比率が26.3%に上昇し、ビットコインとS&P500の相関性も2024年の0.29から0.5へと上昇するなど、金融市場への統合が加速している。
Jocy氏は、「2025年は、ビットコイン供給の担い手が入れ替わる歴史的な大転換の年」となったとも指摘した。
2024年3月以降、ビットコイン長期保有者は累計で約140万BTC(約1,211億ドル相当)を売却。これほどの大規模な供給放出があったにもかかわらず価格が崩壊しなかったのは、機関投資家や企業の財務部門がその大部分を吸収したためだと、Jocy氏は分析している。
対照的に、個人投資家の関心は劇的に低下している。Google検索ボリュームは11ヶ月ぶりの低水準となり、1ドル未満の小口取引量は66.38%減少した。推計では、2025年中に個人投資家は約24.7万BTCを純売却しており、「現在は『バブルの頂点』ではなく、『機関投資家による仕込み期』である」とJocy氏は見ているようだ。
今後の見通しについて、Jocy氏はトランプ政権下の親クリプト政策を強力な追い風として挙げている。
戦略的ビットコイン準備金の構想や、SEC(米証券取引委員会)のトップ交代、ステーブルコイン規制(GENIUS法)の整備などが市場の不確実性を排除し、機関投資家のさらなる参入を促すと見ている。
同氏は、短期(3-6ヶ月)では8万7,000ドル〜9万5,000ドルのレンジで機関投資家の買い集めが継続し、2026年上半期には政策の進展と機関投資家の配分が重なり、目標価格12万ドル〜15万ドルを目指す展開になると予測した。
Jocy氏は、2025年の不振は旧世界から新世界への移行に伴う「コスト」であり、機関投資家が積極的に買い向かう一方で個人投資家が不安を抱えている現在の「認知の差」こそが、「将来のチャンスに直結する」と締めくくった。
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