米証券取引委員会(SEC)は、ブローカー・ディーラーによる特定のステーブルコイン保有に関し、自己勘定ポジションへ「2%ヘアカット」を適用することを容認する新たなガイダンスを公表した。これにより、デジタル資産と伝統的金融の接続が一段と進む可能性がある。
今回の見解は、SEC取引市場部門が公表したFAQ形式の文書に含まれるもので、顧客資産の保護および純資本計算に関する既存ルールへの適用解釈を示している。なお、この文書はあくまで同部門スタッフの見解であり、規則や法令を改正するものではなく、法的拘束力は持たないと明記されている。
2%ヘアカットの意味
ブローカー・ディーラーは純資本規制に基づき、保有資産のリスクを反映させるため一定の「ヘアカット」を差し引く必要がある。価格変動リスクが高い資産ほどヘアカット率は大きくなる。
今回のQ5(2026年2月19日付で「NEW」として追加)では、支払型ステーブルコインに関する自己勘定ポジションについて、SECスタッフは「レディ・マーケット(既存の成熟市場)」があるものとして扱い、市場価値の2%をヘアカットとすることに異議を唱えないとした。これは従来、一部ブローカーがステーブルコインに対し100%ヘアカットを課していたケースと比べると、大きな変化である。
フィンテック戦略家でDigital Currency Group(デジタル・カレンシー・グループ)の理事でもあるTonya Evans(トーニャ・エバンス)氏はForbes(フォーブス)誌への寄稿の中で、2%ヘアカットにより「支払型ステーブルコインはマネー・マーケット・ファンドと同等の扱いになる」と指摘する。マネー・マーケット・ファンドも米国債や短期政府証券などを裏付け資産とする点で類似しているためだ。
元Avalanche(アバランチ)COOのLuigi D’Onorio DeMeo(ルイジ・ドノリオ・デメオ)氏も、今回の措置が主要な摩擦要因を取り除き、流動性向上や決済効率の改善につながると評価している。
トークン化証券との接続
SECのHester Peirce(ヘスター・パース)委員は声明で、「ステーブルコインはブロックチェーン上での取引に不可欠」であり、これによりブローカーはトークン化証券や他の暗号資産(仮想通貨)関連業務をより幅広く展開できると述べた。
SECは過去1年、暗号資産タスクフォースの設置や「Project Crypto(プロジェクト・クリプト)」による規則近代化、トークン化を資本市場に統合するためのイノベーション免除制度の検討など、デジタル資産分野への関与を強めている。さらに、昨年成立したステーブルコインに関する連邦規制枠組み「GENIUS(ジーニアス)法」の実施のため、連邦機関が連携を進めている。
デジタル資産と伝統的金融の橋渡し
今回の2%ヘアカット容認は、支払型ステーブルコインをより伝統的金融の資産クラスに近づける措置と位置づけられる。純資本計算上の負担が軽減されれば、ブローカー・ディーラーがステーブルコインを活用するインセンティブは高まる。
SECスタッフの見解は法的拘束力を持たないが、市場参加者にとっては実務上の重要なシグナルとなる。デジタル資産が既存規制の枠組み内でどのように位置づけられるかが、今後の市場発展を左右する。
今回のガイダンスは、トークン化証券やブロックチェーン決済を資本市場に組み込む動きの一環といえる。ステーブルコインが決済インフラとして定着すれば、流動性や決済効率の向上が期待される一方、投資家保護や破綻時の扱いなど未解決の論点も残る。
|文・編集:Shoko Galaviz
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