この記事の要点
米財務省は2026年3月、ステーブルコイン規制「GENIUS法」に基づく報告書を議会に提出し、北朝鮮のサイバー攻撃グループが過去2年間で推定28億ドル(約4,400億円)相当の仮想通貨を窃取していたことを明らかにしました。
同報告書によると、2025年の不正取引データではステーブルコインが仮想通貨全体の不正取引量の約84%を占めており、その構造的な悪用実態が改めて示されました。
この結果を受け、財務省はAI(人工知能)やデジタルID、ブロックチェーン分析、APIなどの技術を活用した監視体制の強化策を検討しており、業界から寄せられたフィードバックも報告書に反映されています。
さらに財務省は、ステーブルコイン発行体に対する規制強化やAIを活用したリアルタイム監視体制の構築を提案しています。
2025年の仮想通貨盗難、34億ドル超に
2025年の仮想通貨盗難総額「5,300億円超」に、北朝鮮による被害急増|Chainalysis
財務省の報告書は、仮想通貨エコシステムの中でもステーブルコインに対する監視強化を重点課題として位置づけています。
2025年の不正取引データにおいて、ステーブルコインが全体の約84%を占めたという数値は、規制当局が同分野を最優先で対処すべき根拠となっています。
その具体的な対策として、財務省はAIを活用した監視ツールやリアルタイムのブロックチェーン分析技術の導入を提案しました。
これらの技術は、アンホステッドウォレット(自己管理型ウォレット)や分散型プラットフォームを介した取引の追跡への活用が想定されています。
同提案では、主要なステーブルコイン発行体が規制対象の金融機関に近い形で扱われ、より厳格なコンプライアンス要件が課されるとされています。
報告書ではミキサー(取引の匿名化ツール)、分散型台帳、DeFi(分散型金融)といった技術がもたらすリスクについても言及されました。
これらの技術が不正な資金移動に悪用される事例が確認されており、財務省はその対策の必要性を強調しています。
こうした不正利用の深刻さを示す存在として、北朝鮮が仮想通貨業界を標的とする最も攻撃的なサイバー主体の一つとして報告書に記されています。
報告書によれば、北朝鮮のハッカー集団は高度なハッキング技術やソーシャルエンジニアリングの手法を用いて、2025年前半だけで15億ドル(約2,350億円)の仮想通貨を窃取しました。
過去2年間の累計被害額は推定28億ドルに達しており、財務省はこれらの資金が兵器開発プログラムへの充当に使われていると明らかにしています。
ギャラクシー・リサーチのヘッドであるアレックス・ソーン氏もこの報告書の内容に言及しています。
同氏は、財務省の調査結果がCLARITY法(仮想通貨を従来の銀行規制の枠組みに無理に当てはめるのではなく、より明確な規制ルールを策定することを目指す法案)と密接に関連していると指摘しました。
同氏の指摘を裏付けるように、ブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)が2026年に発表した報告書では、制裁対象となっている組織が2025年に仮想通貨を通じて約1,040億ドル(約16.5兆円)を移動させたとされています。
この金額は前年比で694%の増加にあたり、財務省の懸念を裏付けるデータとなっています。
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北朝鮮による仮想通貨の窃盗被害は年々拡大しており、企業内部への潜入や偽企業の設立といった手口の多様化が進んでいます。
チェイナリシスの2025年の調査では、同年の仮想通貨盗難総額が5,300億円を超え、北朝鮮関連の被害が急増したことが報告されました。
外部からの窃盗にとどまらず、同調査では仮想通貨企業の最大20%に北朝鮮の工作員が潜入しているとの結果も明らかになっており、応募者の3割超が偽装であったとの内容も報告書に記しています。
北朝鮮ハッカーが米国内に偽企業を設立し、仮想通貨開発者に対してマルウェア攻撃を仕掛けていた事例も明らかになっています。
こうした状況の中、米国財務省がGENIUS法に基づいてステーブルコインの監視強化やAI技術の導入を提案したことで、CLARITY法案を含む立法措置の加速につながるとみられています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=158.46 円)
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Source:米財務省レポート
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用

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